002:なぜ「人の問題」を「個人の資質」のせいにしてはいけないのか?

「うちの社員は主体性がない」
「最近の若手は、根性もなければ向上心もない」
「結局、優秀な人材なんて、うちみたいな小さな会社には来ないんだよ」
制度を変えたり、環境を整えたり、
色んな手を打ってきました。
それでも変わらない。
諦めている社長様も多いと思います。
組織に停滞や摩擦が生じ始めたとき、
多くの経営者はこのように嘆き、
解決の糸口を「社員の性格」や「資質」に求めてしまいます。
かつて人数の少ない会社だったころは、
社長が直接一人ひとりの面倒を見てあげられました。
その成功体験が強いほど、
期待通りに動かない今の社員に対して
「あいつはダメだ」と、
どこか諦めの感情を持ってしまうのです。
しかし、ここが、
「組織力経営」に脱皮できるか、それとも
「社長一人が孤軍奮闘する経営」を続けるかの
大きな分かれ道になります。
多くの場合、現場で起きている問題は
「人の問題」ではありません。「組織の問題」です。
1.人が育つ組織には共通点がある。
「同じ人間が、違う組織にいるだけで、
懸命に働き、結果を出し、優秀な社員になるかもしれない。
その理由が言えるだろうか?」
人は環境の生き物です。
どれほど意欲の高い若手が入社しても、
その意欲を削ぐような構造の中にいれば、
1年も経たずに「指示待ち人間」へと変貌します。
逆に、多少不器用な人材であっても、
機能する組織の中にいれば、
見違えるような成長を遂げることがあります。
私たちは何度も、そういった場面に出会ってきました。
社員が育たない、動かないというのは、
社員個人の能力の問題である前に、
社員が力を発揮できるルールや役割、判断基準が
会社に欠落しているというサインなのかもしれないのです。
2.組織をまとめるための「定義」と「教育」
○目標を定める(仕事の遂行、業務の効率化、質の向上、人材の育成)
○戦略を伝える(どうすればうまくいくのかをリーダーが考える)
○仕事で重視する考え方を決める(基準、コアコンピタンス)
○仕事のルールを決める(やり方、会議方法、報告方法、規律)
こうした判断基準(定義)が曖昧なままでは、
社員は自分の価値観や経験(自分の正義)だけを
頼りに動くしかありません。
結果として、
営業は売上だけを追い、
現場は工程だけを守ろうとして衝突が起きる。
「あいつは話が通じない」といがみ合ってしまうのは、
会社が「共通の定義」を用意できてないから
かもしれません。
3.「個人の資質」を論じても未来はない
「あいつの性格は直らない」
と個人の資質を責めてしまった瞬間から、
改善や創造のための思考は停止します。
性格を変えることは至難の業ですが、
「組織の定義」を書き換えることは
経営者の意志一つで可能です。
管理職が機能しないのも、
若手が主体的に動けないのも、
すべては「そうさせてしまっている構造」
に原因があります。
中小企業の現場で起きる問題の多くは、
適切な「定義」を行い、
その定義を落とし込む「教育」を施せば、
1年後には多くのケースで改善の兆しが見え始めます。
経営者の仕事は「設計図」を描くこと
「期待通りの社員がいない」と嘆くのは、
今日で終わりにしましょう。
「どう定義すれば、このメンバーで
勝てる部隊が作れるか?」
という設計者としての視点をぜひ持ってください。
組織は「定義」と「教育」で作る
次回から、バラバラになったエネルギーを
統合するための具体的な設計図、
「8つの定義」について少しずつ考えていきます。
【組織の「定義」診断】
以下の項目の中で、
社員が自信を持って答えられないものがあれば、
それは個人の資質ではなく「組織内の定義の問題」です。
- [ ] 目的の不在: 社員に理念や会社の存在意義を聞いても、自分の仕事との関係を説明できない。
- [ ] 目標の断絶: 会社の目標と、自分自身の給与や成長(損得)の繋がりが理解されていない。
- [ ] 勝ち筋の未共有: 「なぜ他社ではなく、うちの会社にお客さんが来るのか(強み)」を社員が説明できない。
- [ ] 役割の曖昧さ: 部門間の境界線が曖昧で、「それは自分の仕事ではない」という押し付け合いが起きている。
- [ ] 評価のブラックボックス: 「何を学べば、どう動けば評価されるのか」の基準が明文化されていない。
診断結果のフィードバック:
チェックが3つ以上なら、
社員は「霧の中」を走らされている状態かもしれません。
彼らの能力不足を責める前に、
会社が「定義」という光で道を照らしてあげてください。
社員が変わらない時、
最初に見るべきなのは社員ではなく組織です。
組織が変わると、人の行動は驚くほど変わります。
「個人の資質」のせいにするのをやめた時、組織変革は始まります。
まずは、どの「定義」が不足しているのか、客観的に診断してみませんか?
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